Written by Okajima, Jun. 2008/7.



Okajimaの法則

ムーアの法則 > ソフトウェアの肥大化
半導体の微細化 > ソフトウェアの肥大化
もっと一言で言うと、
「微細化 > 肥大化」

よって、
・SSDのPC
・Internet Boot の PC
といったものが中長期的には主流になる。



言い訳:
これは、私がCD Boot/Internet Bootに取り組んでいた2004年頃に考えたことです。 そのときは、SSDのPCなんて絵空事だったのですが、 今はすでに当たり前。 よって、当たり前のことを偉そうに言っている、 という実に情けない内容になってます。











■ はじめに:

この業界でよく言われることに、こんなことがあります。

「ムーアの法則で、CPUは高速化され、メモリも増えている。
しかし、結局、ソフトウェアの肥大化がそれを食いつぶす。」

つまり、ムーアの法則による微細化の速度 = ソフトウェアの肥大化の速度、 と主張しているわけです。
この理論はよく聞きますが、しかし、本当でしょうか。
個人的には、これは正しくない。 ムーアの法則 = 肥大化速度ではなく、ムーアの法則 > ソフトの肥大化、と思ってます。





■ いままでの歴史:

それでは、今までのソフトの肥大化の速度を検証してみましょう。
下は、ソフトの肥大化に関する物凄くいい加減な図です。 この図の根拠は、うろ覚えのいい加減な記憶を除けば、あとは 私の独断と偏見という あまりのいい加減さですが、そんなには間違ってないでしょう、多分。

HDD容量の増大とインストールサイズの比較。



・・・このいい加減な図が正しければ、 どうやら、微細化の速度 > 肥大化の速度 っぽいですなぁ。 (HDDサイズはムーアの法則とイコールじゃないだろ、という突っ込みはパス。)
たとえば、Windows95(初代、1995/11)のインストールサイズは100MBぐらいでした。 そして、執筆時現在(2008/7)の主力OSである Vista(SP1、2008/3)が10GBぐらい。 この二つの比較だけでも、13年間で100倍ですから、 ムーアの法則(13年間で400倍)を若干下回っています。 さらに、たとえば、Ubuntu LiveやKNOPPIXなど、 1CD Linuxではこの傾向はさらに顕著です。 アプリまで詰め込んで、圧縮時700MB。非圧縮時2GB。 Windows95でも、アプリをいろいろ入れれば、数百MB。 Double Spaceで圧縮しても、200MBとか。 つまり、700MB対200MBなので、13年で3.5倍の肥大化。 極論すれば、この13年間でムーアの法則は400倍なのに、 ソフトのサイズは4倍以下しか肥大化してないんですよ。
以上の勝手な議論からすれば、 実は、ムーアの法則の速度より、ソフトウェアの肥大化の速度の方が 遅いのです(と、独断と偏見で一方的に言い切る)。 これを、発見者(爆笑)の名前をとって Okajimaの法則 と 勝手に命名します (え、自分の名前なんてつけるなって・・・ごもっともなご指摘。汗、汗。)。










■ Okajima の法則 応用例:

このことは、様々な方向性に使えます。

SSD PC:
まず、もっとも直接的に関係する話では、 SSDのPCがあるでしょう。 Flash Memoryの価格あたりの容量は、露骨にムーアの法則が支配する世界です。 さらに、ここ数年間は、デジカメ用などの需要の急増を見越した 競争の激化により、価格が急速に下落しており、 ムーアの法則をしのぐ勢いで低価格化、大容量化が進んでおります。 いまや、1GBで1000円を切るところまで来ています。 こうなると、Ubuntu Live全部入りPC、といったものも 現時点ですでに十分実用になるわけです。 さらに、今後も、Flash Romの大容量化 > プログラムの肥大化、 であれば、今後もSSDでOKですし、そして、実際にそうなる可能性は非常に高いでしょう。 別の言い方をすると、HDDなし、Flash RomからLinuxを立ち上げる ある種の 情報家電 / Internet Appliance のようなPC亜種は、今も、そして今後も十分可能です。

2nd Cache:
それ以外ですと、CPUの2nd Cache があります。 2nd Cache 容量の増大は、いまCPU設計者を悩ましている発熱問題とも無関係ですので、 ほっておけばムーアの法則に従ってすくすくと成長していくでしょう。 そして、最終的には、 そのうち、フットプリント全体をキャッシュできるようになるかもしれません。 まあ、これは、あくまで、ムーアの法則の方がソフトの肥大化より速ければ、ですが。
さらに、この考え方を進めると、 メインメモリのないPC、というのもあるでしょう。 すべてが2nd Cache に入っている。別の言い方をすれば、 超高速 Main Memory を On Die で搭載した CPU。

Network Boot:
また、このOkajimaの法則は、Network(WAN) Bootなどにも応用が出来ます。 ネットワークの帯域がどれくらいの速度で伸びるのかは、 ムーアの法則に必ずしも支配されているわけではありませんが、 ギルダーの法則など、ムーアの法則以上の速度で伸びるとの主張もあります。 つまり、 ギルダーの法則 > ムーアの法則 > ソフトの肥大化、 である可能性はあります。 わたしは、実は、ネットワークの帯域は ギルダーの法則ではなく、ムーアの法則で伸びる、 なぜなら、ADSLのチップもIXのルータのチップもムーアの法則に支配されているから、 と勝手に思い込んでいるのですが(根拠なし)。
とにかく、ギルダーの法則にせよ、ムーアの法則にせよ、 いずれにせよ、 ネットワークの速度の向上 >= ムーアの法則 > ソフトの肥大化となります。
で、Network(WAN) bootなんですが、 これが実用になるかどうかは、 ようは、ネット速度の向上とソフトの肥大化、どちらが速いかで決定されます。 そして、以上の議論からは、「実用になる」という結論になるわけです。 いまでも、LANからのPXE Bootは当然として、BFlets Bootだって 実用化は可能ですが、 今後は、ADSL Bootも可能かもしれませんし、 中長期的には、Mobile Broadband Boot( 今なら LTE Boot?)も可能かもしれません。 モバイル通信の速度を決定しているのは、 DSPの処理速度ですから、これはムーアの法則です。 つまり、ムーアの法則 > ソフトの肥大化であれば、 中長期的には、モバイルブートという驚異的な技術も、中長期的にはアリなのかもしれません。 今現在では、単なる帯域の無駄遣いでしかないですがね。







■ Okajima の法則 その根拠:

ようは、以上の議論は、微細化 > 肥大化、という一点に頼った 議論なんですが、 じゃあ、なぜそれが言えるのか。
経験則という以上は、正直、明確な根拠はありません。
まず、微細化の方ですが、これはムーアの法則関係で、 今までもさんざんいろいろと論証が行われてきたことなので、 とりあえずそちらの方をご参照ください。
そして、肥大化の方ですが、あまり根拠はないのですが、 たぶん、一番大きなものは、開発工数の爆発でしょうね。 一般に、コードの規模が10倍になると工数は100倍に膨れあがる という説があります。 であれば、コード量の増大、すなわちソフトウェアの肥大化には 一定の歯止めがかかるでしょう。 まあ、こんなのははなはだ希薄な根拠で、 プログラミング言語の パラダイムが変わり、 いまの手続き型、オブジェクト指向型、などではない 全く新しい何かになれば、どうなるかは全くわかりません。 ただ、今までの経験則では、微細化 > 肥大化なんで、 今までの経験則からは、たぶん それが続くであろう、という楽観的な見通しはあります。








■ Okajima Gap:

ただし、以上の議論は、HDDを不要にするものではありません。 今までと違い、HDDレスのPC、たとえばSSDオンリーのPCは 出現するかもしれません。 そして、そうなれば、HDDは必須ではなくなるのですが、 しかし、それは、HDDを不要にするわけではありません。
たとえば、Windows95のころ、OSとアプリで200MBとかすぐ使ってましたが、 HDDが500MBとか普通でしたよね。 ようは、OSとアプリで半分とか使ってしまう。 ちょっとHDDが少ないPCですと、インストールが一通り完了した時点で もうHDDが満杯。 ところが、いまのVistaPCですと、 OSとアプリでせいぜい30GBとか。 ところが、HDDは300GBとかありますので、 インストールだけではまだまだ余裕があります。
この余裕は、 HDDの大容量化の速度と、ソフトの肥大化の速度、 どちらが速いかで決まります。 HDDの大容量化の速度は、「ムーアの法則」とは 言えないかもしれませんが、 現実問題として、ここ10年で100倍以上の速度で 大容量化しています。ようは、ムーアの法則を超えている。 よって、インストール後の「余裕」は、今後も増えるでしょう。 この「余裕」を、Okajima Gap と勝手に命名します。

じゃあ、別に考えて、この「余裕」(= Okajima Gap ) の増加により、中長期的にHDD容量は余るのか。 結論から言うと、余りません。
これは、冷蔵庫は必ず満杯になる法則です。 どれだけ大容量のHDDを買っても、 どうせ、結局、下らないファイルを山盛りに入れてしまうんです。 じゃあ、今後、どんな下らないファイルを入れるのか。 そりゃ、動画ですよ動画。 もう、あれはめちゃくちゃな容量を使いますから。 PCをHDDレコーダーに使う、という動きもありますし、 また、IP Multicastを使った地上波再送信の話も盛んです。 また、動画ソフトのダウンロード販売も増えました。 ビデオカメラも、いまは全部 Flash Memory にMPEG4とかで撮るタイプです。 こうなれば、そういった多彩な映像が、HDDに山盛りになるでしょう。 ・・・って、現実問題としては、子供の運動会の画像なんて そっちのけで、エロ動画とエロ動画とエロ動画ばかりに なるような気もしますが。
つまり、Okajimaの法則(笑い) により、HDDは必須ではなくなりますが、 不要になるわけではなく、 下らない動画ファイルを Okajima Gap に 山ほど入れるメディアとして、 今後も生き続けるでしょう。
ただし、プログラムインストール用からエロ動画格納用へ 用途が変わる以上、HDDに求められる仕様も変わるでしょう。 具体的に言うと、信頼性や速度はたいした問題ではなくなり、 とにかく容量さえデカければいい、という風になるんじゃないかな。

また、以上の議論は、HDDだけでなく、Networkなどにも応用できます。 昔々、Nifty-Serve時代、9600bpsのモデムが転送したデータの多くは、 フリーウェアのソフトでした。 いま、ADSLのモデムが転送してるデータの多くは、 極端な話、エロ動画です。 何が言いたいかというと、 ADSLモデムの性能はムーアの法則で向上しているのに、 ソフトはそこまでは肥大化していないので、 フリーウェアのダウンロードに必要な容量の割合が低下しているのです。 ある意味、そこに、別の意味での Okajima Gap が生じている。 たとえば、昔なら、Service Pack などを ダウンロードで配るなんて 考えられなかったけど、いまはそれが前提。 ようは、ソフトの肥大化のペースより回線の高速化のペースの方が速い。
しかし、せっかくのこの余裕も、 それを、エロ動画のダウンロードが食いつぶしているのです。







■ 未来のHDD:

どうせエロ動画保管庫専用と割り切ったとき、 未来のHDDはどう変わるのでしょうか。
まず、信頼性に関する考え方が変わります。 全壊するのはマズいんですが、一部のファイルの一部のセクタが 飛んでも、その部分の画像が乱れるだけなので、ざまーみろ。 所詮はエロ動画。一部だけなら、飛んだら飛んだでしょ。
さすがに、ファイル全部が消えるのはまずいんです。よって、 インデックス部分は、複数のセクタに多重化冗長化して書く、 別途 Flash Memoryにバックアップするなど、 適切な対策を講じて、 インデックスが消えたことによりすべてのファイルが消失する事態は 避ける必要性があります。 しかし、一部のファイルの一部のセクタぐらいなら、消えたら消えた。 そんなことより、コストや容量のほうが重要でしょう。
また、アクセス速度も、とりわけランダムアクセス速度、シーク速度などは 遅くてもOKでしょう。シーケンシャルアクセス速度ですら、 今よりも遅くてもいいかも。 また、読み込みに比べ、書き込みが遅くてもいいでしょう。 エロ動画は読み出しのほうが回数は多いですからね。 また、書き換え回数に制限があっても何とかなるでしょう。 インデックス部分の書き換えに制限があるのはまずいですが、 データ部分は制限があってもいい。たとえば100回まで、とかでもOK。 とにかく、プログラム格納ではなくエロ動画専用と割り切れば、 いままでのHDDとはだいぶ違う仕様になるのです。
そして、以上のことを総合すると、ある種の光磁気方式によるHDDが ひとつの候補となるでしょう。いままでも、この手のメディアは 言われてはきましたが、それが現実になるのかもしれません。
さらに、この考察を進めれば、 そもそも、HDD(固定ディスク)という形態自体が不要になるかも。 DVD-RWのような書き換え可能光ディスクの技術も 年々進化しており、原理的には、いまのDVDと同サイズでテラバイトを 越える容量を実現する手法も発表されています。 やはり、光ディスクは、HDDにくらべ、アクセス速度は遅そうですが、 しかし、エロ動画専用保管庫なら、光ディスクのほうが コストパフォーマンス的に優位に立てるかも。 といっても、その逆も考えられ、 何百枚ものエロ動画ディスクを取っ替え引っ替えするのは 面倒、との意見により、やはりHDDのような固定的な作りが 主流であり続けるかも。 このあたりは、消費者の感覚に依存する部分が大きく、 技術面からは何とも予測が出来ません。正直、どうなるんでしょうか。










■ 結論:

経験則では、微細化肥大化 ですので、 SSDのPCや、Internet Boot のPC は中長期的には一般的になるでしょう。
しかし、それでHDDがなくなるか、というと、 単なるエロ動画保管庫のHDDを皆さんいつまでも愛用し続けるでしょう。 具体的には、10年後、SSDのPCが当たり前になると共に、それに接続する エロ動画満載の100TB USB HDDなんてのが、 どこの家庭にもあるんじゃないかな。








Copyright (C) 2008, Digital Infra, Inc. All rights reserved.